きれい
カメラを持っていても、撮られなかった景色がある。
その瞬間はまさに瞬く間に始まり終わった。
一度目は夜空に綻ぶ青い光。
あの色は真夏の青空の種のように青かった。
その種は一条の光の条を描いたかと思うと。
急に広がり、まるで花が咲くように広がった。
二度目はかみなり。
二段の雲の間で仄明るく、時に煌めくそれは。
行灯から覗く火のように。
羽を広げんとする一呼吸前の天使のように。
ヒトの目はきっと、言葉では理解できないものを実感するためにあるのだろうと感じる。
当たり前だが、言葉で表現しきれない。
あれは見るほかに理解を許さない。
視覚は言葉の理解を超える。
綺麗という漢字、これもきれい。